鯨が枯れる(reprise)/mizu K
の清々しい光のなかで
しおれしなびたおれ折り重なっていく散らばっていく
床に乾いていく植物の足あと、てん、てん、てん
彼らの通った先には濡れた後ろ姿がありました
鯨が枯れる
ある標本を収集し保存している博物館が
夜の砂時計の落ちるかすかなさらさらとした音に
時の堆積量に耐えきれず柱が
徐々に滑り出していく壁がやや一時間前と
位置がずれ
始めている時刻、夜の人々、多くの水族館の部屋
大展示室Aに飾られた鯨の標本が少しずつ崩れていく
夜のうちに少しずつ崩れ流れていった鯨の骨は
夜明け前にうずたかく堆積した山のよう
大展示室Aにはそのとき鯨の標本は存在しないただ
ぽっかりと空いた空間を風たちが走っていく
ものみなすべてを風化させる風
砂漠にぽつりと取り残された鯨は
海への帰り道がわからないままそこに横たわった
もう刻々と変わる風紋の矢印を道標に
する必要はないただそこに横たわればよい
いずれ大きな風が鯨を海へと運んで
くれるだろう
鯨が枯れる
戻る 編 削 Point(5)