切れ端/かいぶつ
 
君はその銀色のハサミで
何もかも容赦なく
切り抜いてしまう

また空がひとつ足りないと
カモメが嘆く
君のスカートに
貼りつけられた一片の空

今日も次々と
その鋭く冷たいハサミで
薄く柔らかい部分ばかりを
選り好みながら
空を切り抜く

そしてまた一枚
また一枚と
継ぎ接ぎされていく
空と空

空の犠牲となり
切り取られた僕の断片も
あの猥雑な色彩を放つ
スカートの一部となり
紛れてしまった

君がハサミで施した
僕の痛ましい裂傷部
その断面があまりにきれいなので
僕はついついそこを撫でては
疼痛に耐える夜を幾度も過ごす

小さく切り抜かれた
一片の晴れた空の下
僕の切れ端が
ビクビクと蠢いている

僕の迎えを
待ち侘びているかのように
小さく呻き震えながら
蠢いている

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