旅の便り /服部 剛
 
頭上に広がる空の下 
何処までも流れる川の畔(ほとり) 
旅人はぽつんと一人 
立っていた 
雲に隠れた天使が 
ちらっと顔を出し 
碧い硝子(がらす)の瞳で 
彼に云う 
「
   きみの歌を、聞かせてよ 
   他の誰でもない 
   きみ自身を、咲かせてよ 
              」 
歩き疲れた旅人は、腰を下ろした。 
背負っていた荷物を、下ろした。 
柔い緑の草々は、
それらの重さを、受けとめた。 
鞄から取り出した 
ペンと便箋を手に 
遠い未来の誰かへ綴る 
旅の便り 
ふと見下ろせば 
あまりに細い茎の上に咲く 
黄色い花が一人 
風の歌を囁いた 
小さい顔に 
いっぱいの 
歓びを広げて 
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