小道/アンテ
 
れて止まらなくなる
ごめんねごめんね
もう傷つけたりしないから
両腕で木を抱きしめる
ありがとうでも
もういいの
わたしが自分で決めたの
木の枝も
葉っぱも
次第に形を失っていく
輪郭が崩れていく
色が混じり合い
わたしの身体と区別がつかなくなって
溶け合って
本当に死んだりしないの
大丈夫
いつの間にか木は消えてしまって
小さな小道が現れる
腕があたたかい
スコップと裁断ばさみを
物置小屋に片づけて
柿の木の鉢をしっかりとかかえて
もう行かなくちゃ
庭に別れを告げる
小道をぬけて垣根の外へ出る
柿の木が出迎えてくれる
ごつごつした幹が
四方に広げた枝が
こんなに大きかったなんて
知らなかった
鉢植えの芽が小さな葉を揺らす
柿の木はゆっくりと
空を揺り動かしている
日当たりのいい場所
を見つけなくては
柿の木の根元にうずくまって
空を見上げていると
なつかしい場所に帰ってきた気がする
枝のあいまに見える空が
枝葉が揺れるたび形を変える
ただいま
形を変えている



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