小道/アンテ
金属ブラシで懸命にこすって
庭の水道で洗い流すと
スコップも裁断ばさみも
見ちがえるようにきれいになった
せっかく用意したリュックには
けっきょく
詰めるものがなにも思いつかない
縁側に置いたバケツの鉢のなか
柿の木の芽が
新しい葉を陽射しに広げている
シャツの袖をまくり
靴紐をしっかりと結んで
準備万端
庭に出ると
垣根の木々はどれも手強そうで
それでもいちばん手強そうなのを選んで
裁断ばさみで枝を落としていくと
ぱちん
と乾いた音がするたび
胸がずきずき痛む
ここにいれば
ずっと守っていてあげるのに
奥に進めば進むほど
枝は鋼のようにかたくなっ
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