創書日和「扉。」/狠志
 
取っ手のない扉を前に、
僕らは立ち止まった。

誰かは、そっぽを向いて。
誰かは、泣き始めてしまって。
誰かは、殴り始めた。

殴り続けている。

僕はそれらを見て、何もしていない。
この扉をあけたところで、何がどうなるのだろう。

誰かが、銃を手に取った。
扉を撃ち破ろうというのだろうか。
コメカミに付けて撃とうというのだろうか。

誰かが、優しい声で唄い始めた。

取っ手のない扉は、僕らに見えているのだろう。

たぶん、おそらく。
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