チェス駒・薬・真夏・宝石/こうや
ぶつかるならば消して消されて
チェス駒を進めるよに
規則的に混雑を闊歩したいよ
--------
時間が間延びしてしまったので
一刻一刻を回収している
処方された薬があまりにちっぽけすぎるから
自省に足るかな なんて思う
--------
闇から流れてくる盆踊りの音は
幼いわたしの胸をいつもわしづかみにしていた
近年は倦怠期なのか
はたまた心が変態したのか
ベランダの網戸に手をあてて
ゆらいだ音を耳の入り口あたりで聞いているだけだ
向かいに住む少年が
ソーダ水の色したビーチサンダルで
音のする方へと坂道を駆け下りていく
「楽しんでおいでね」と
半分嘘の言葉をつぶやく
唯一こんな真夏の時にだけ
大人になったのだと実感できる
---------
一億くらいの宝石を
懐にこっそり抱えて歩いたならば
虚栄でも笑っていられるだろうか
戻る 編 削 Point(4)