舞踏会/かいぶつ
 
僕と踊りませんか?
産まれたての死人が言った
もう一度、聞き直そうとしたが
既に腐り始めていたので
棒でつついてそれきりにした

でも本当はすごく嬉しかった
素敵な言葉だなと思った
だからひとりで踊った
帽子の中で 日が沈むまで
線香の煙みたいに

月に蜂蜜をかけてほおばる
夜風が喉を焼き 先端を凍らせる
あなたの匂いが黙っていないので
カーテンを燃やし
下着を脱いだ

私は息の吐き方も忘れて
そのまま焼け石になる
爪先の弾ける音が
夏の花火みたいに恐ろしかったので
耳をビールで流し込んだ

街灯が盗まれた頃
私は退屈の袖をつかんで
いっそ屋根という屋根を
全て飛び越えてやろうかと鼓舞したが
あいにく外は無駄に沈んでいる

夜明けの合図はいつだろう
もう手の平は不確かな希望に
埋め尽くされているっていうのに
待つことがそんなに大事なのだろうか

床も天井も
聞き飽きたという顔をして
私の身体を撫でることに執着している
もう、なにも感じるはずないのに

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