微熱/月音
「勝ち組」 なんて言葉があるが
そんなもの
どうでもいい
認めようと 認めまいと
私たちは 間違いなく
「生き残り組」 だ
街路を覆う銃弾の嵐も浴びず
怨恨のナイフに刺されることもなく
魔が差して特急列車に飛び込むこともせず
ウイルスやDNAが体の中で反乱をおこすこともなく
生き延びた
ただ
それだけのこと
苦しかろうが 苦しくなかろうが
ただ
そんなことだ
右手でポケットの鍵の束を探りながら
左手にスーパーの大きな袋とバランスをとりながら
そう
そんな風に 思った
だから どうだということもない
風邪をひいたなら
休めばいいのさ
そのくらいの時間は まだ 十分にある
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