おとなに。/Utakata
おとなになるから。
もう泣くのは止めるのだと
きみは言う。
ぼくたちはまるっきりこどもで
お互いの身体に恐る恐る手を伸ばしながらも
やっぱりこどもで
おとなになりたいのかと尋ねれば。
そうしなきゃいけないからだと答え。
顔は
まるっきり笑い泣きだっていうのに
おとなになるということは ちょうど
真夜中に一本の電車を待つようなもので。
無人駅で
遠くの踏切のかすかな音に耳を澄ませるようなものだ
もう泣くなと言いながら
彼らは
喉の奥のかすかな震えや
たましいの
一番柔らかな場所を
ていよく奪い去ってゆく
(でも)
遠くの踏切が
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