銀の針のような雨が/こゆり
 
はじめは
音もなくただ
切り取られた絵を
見ているようだった

気付けば
あたりいちめん
降り続いていた
ほそく長い銀色の

むせ返す空気を
土に
留めておくように


ゆびと
ゆびのあいだを
こぼれ落ちていく
水の球をあつめて
銀の針が
ひとつ ひとつ
縫いつらねてゆく

切りひらいた
あつい雲の
もっと向こう
氷点下の空に
輝けるよう


銀の隙間から
漏れる月に
触れようとして
伸ばした
白いうでには
まるで刺繍のように
赤と青が
張り巡らされていて

鼓動、


銀の針が
ひとつ ひとつ
こころを
留めてゆく
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