栞/aidanico
若し若しお元気ですか、気持ちも漫ろなままに、
筆を走らす限りなのですが、屹度復、墨の滲むのが収まらないうちに、
丸めて放り出すかも知れないのですが、これを書いている限りは、
不思議と淹れたての珈琲が波打つのをやめて、その香りを燻らすような、
そんな心地で居ます。そう謂えば、
伏し目がちな彼方の睫毛を湿らすのは、
もう、三日も前に過ぎ去った五月。
「家族達にはもう前から告げていたのさ。」だって
言う覚悟は未だ決って居た訳では無いみたい。
失って仕舞った遠い影踏み、その中に何時までも其処に居ることはできない。
とは解かって居たけれど、その横顔や夕顔、首筋が哀しいね。
だけど私
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