煙草/蒼木りん
 
肺の病で
彼はもう煙草が吸えない

禁断症状は
仕事とゲームで紛らわす
けれど

私は煙草を吸う
くわえ煙草で空を睨んで
足元を見下ろして
死んだ灰を捨てる

私の肺は
彼と同じで
汚れてる

私は彼を恋う
気づかれないように
気づかれてはいけない
成らぬ恋

不安をほっておけない
優しさは自分の
言い訳

彼の心は
私と同じで
きっときれい

短い命だから
紅い火を燃やそう
けれど

現実と夢は
温度が違うから
指が触れることもない

彼が
煙草の匂いが
嫌いになる頃
私も嫌われるんだろう




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