入水間際/水島芳野
とめどない想いが
君を溺れさせていた。
もうとりかえしがつかないと
思い込んで見上げた夕暮れは
歪みを心に焼きつける。
どうかまだ壊れないで
いつか見た
優しいあの日を偽らないで
(優しさをも残酷に飾りたがるのはやめなよ)
(全部が嘘だったわけじゃない)
(すべてに裏切られたわけじゃない)
(足跡は君を裏切ったりしない)
(消え去ったりなんて、しないんだよ)
溢れ出す涙を
今はまだ、拭わなくていい
いつか君を
傷が支えもするだろう。
辛い思いが
その日を救いもするだろう。
だから忘れないで
(明日のために、)
(いつしか出会う誰かのために)
誰かのついたため息が
君の姿を絡めとる
憂鬱すぎるこの世界で
幸せだけを味わうことなんてもう
できないんだ。
でもどうか忘れないで
世界は君を拒まぬことを
見上げる瞳を歪めぬことを
(さすればいつしか解かるだろう)
(あなたがこの世に生まれた意味が)
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