千夜一夜/朱葡
 
あなたは自分の為に物語を綴る。留まる自分を揺さぶるように
物語の中には、激しさを置く。その想いを人々は美しいと言う

私はその中に、あなたの叫びを感じてしまう。聞こえてしまう。
あなたの叫びが私の中で蠢くから、私はそれを形にしてしまう。

あなたが綴る物語から聞こえるのは「なぜ?」だ
目の前のものが、突然無くなる恐怖。それをずっと感じてきた。

事実があまりに残酷すぎて、いつしか真実をゆがめていった。
行き場を失った真実が、言葉を綴らせ物語を生んでいく。

自分の存在を深く刻みたいと願うのは、溜め込んできた「なぜ?」
が、答えを求めることで恐怖を突き動かしてしまうからだ

千夜言葉を紡ぐのは、一夜の想いをはせるため
たとえ望む答えが出なくても、真実を垣間見れるのかもしれない。

物語は結末の為にあると、あなたは言った。なら、一夜の為に
千夜があるのかもしれない。あなたの真実の為に愛があるように。

そのために、あなたは千夜物語を綴る。一夜の真実の為に


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