不思議な風 /服部 剛
 
昼食を終えた 
車椅子のあなたを 
ベッドに寝かせ 
おむつを開けば 
あふれるほどの排泄物 
「先輩ちょっといっしょにお願いします」 
腕っぷしのいい先輩がやってきて 
拘縮した両膝をぐいっと開く間に 
ぼくは必死で腕を伸ばし 
お湯で絞った 
襤褸っ布で 
すべてを拭き取る 
この手が少々汚れようと 
お構いなしで 
ひたすら拭き取る 
おむつを、閉じる。 
ずぼんを、履かせる。 
「 きれいになってよかったね 」 
ふぅ〜っと 
額の汗を手でぬぐう 
いつもは「愛」になれない 
弱虫のぼくが 
微かな「愛」にふれたような 
ぼくと先輩と、あなたの間に 
ふしぎな風が、開いた窓から 
吹き抜けた 
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