扉/山中 烏流
玄関を覗くと
見知らぬひとが
まるで、見知らぬひとのように
寝そべっていて
会釈で挨拶を済まし
扉を開くと
そこには黒い影だけが残り
あとは色だけだった
気にしないことにし
放ったままで、台所に行くと
見知った顔のひとが
初めて会うひとのように
笑顔をしていた
玄関には、やはり
もう誰もいない
開く音がして
振り返るようにすると
視界の端の方で、黒いひとが
くるくると笑っている
前を向き直して
見知った顔をもう一度見れば
それは、もう
知らない顔に変わっていた
テレビを見ているひとと
窓の外でうずくまる
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