無花果の花/亜樹
妹島が住んでいる家の庭には、大きな無花果の木が在った。
その木には無数の実がなっていたが、家主はそれを採りはしない。
まずいのだ。あれは。
ちっとも甘くなく、食感もどこかざらついて、そのくせ小さい。
鳥ですら、見向きもしない有様だった。
だから毎年、妹島はその実が生るのも落ちるのも朽ちるのも、それに任せていた。
花も咲かせず、実だけを作り、そのまま朽ちてゆく。
淋しい女のような木だと、常々妹島は思っている。
妹島がこの家に住むようになって、随分と久しい。
けれどもこの家は別に彼の持ち家と言うわけではなかった。
彼は、単なる下宿人に過ぎない。
彼
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