碧の戯言、碧のしるべ。/水島芳野
 
碧色の風が丘を吹き抜けるとき、
あなたは穏やかな夢を見るだろう。

掠れた声で泣きじゃくりながら
それでもまた、まっすぐと前を見据えてほしい。
溶け崩れるような崩壊の音に耳を傾けずに
波の打ち寄せる音に心を預け
揺り篭をまた探して欲しい。


人魚の忘れてしまった歌すら
あなたはまだ歌うことができる。


青色の空が丘を包み込むとき、
あなたは哀しげな風の声を聞くだろう。

穏やかな声で世界の終わりを告げながら
それでもまた、カナリアの鳴き声に焦がれ
打ち砕かれるような絶望の淵に立たされながらも
吹き抜けた風の匂いを味わい
青色の鳥を探して欲しい。


海賊も見つけられなかった宝物すら
あなたはまだ探り当てることができる。


碧色の風が丘を吹き抜けるとき、
あなたは穏やかな夢を見るだろう。

どうかそのとき感じる不自然な和音に耳を傾け
迫り来る終焉の小舟に身を預けないでほしい。






願わくは、

ただ、

君が正しく在ることを。
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