晴れときどき曇り/山田隆
朝起きたら父親の車に青いペンキで落書きがしてあった。
ちょっと肌寒い風に吹かれながら
「仕方ないさ」と言う父親の横顔は悲しいという一言では表現できない。
明日の朝にこやかに59歳を迎えるはずの横顔を曇らせた落書き。
誰が書いたかはわからないが、明らかに気分を悪くするだけのものだった。
「よかったね。君の落書きは大成功だよ」という皮肉を言う相手が誰かもわからない。
父親の肩に手をやったとき、少し震えているのがわかった。
世界にはたくさんの事件や問題が起きていて、日本の将来を案じさせるが、
まだまだ非現実的な感覚だった。
今回の事件は、世界という単位で見れば本当にちっぽけだけれど、
この世界に落胆するには十分だった。
警察を呼んでから2時間くらいして、ものすごく澄んだ空が広がったけど、
仕事に出て行った父親がこの空を見ていると思うと
僕は涙を止めることができない。
ただただ、平凡に
ただただ、幸せに
ただただ、それを願っているだけなのに。
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