ラジカセ/小川 葉
 

今も変わらずここにある
日々の隙間から
風が吹いたはじめての時だった

忘れない
ラジカセにはたくさんの
周波数があって
すぐに合わせられるように
印をつけていた
今はもう聞こえない
思い出は記憶の果てにだけある

父の日
小さなラジカセを父に贈った
覚えてるだろうか
あの銀色の巨大なラジカセを
二人で目を輝かせて見ていたあの一日を

必要なものは
すべて揃ってしまった
欲しいものはなくなってしまった
ただあの日の輝きが欲しくて
父さん
あなたに小さなラジカセを贈った
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