食材調達/北村 守通
ふと
はるか彼方で
黄色い声があがる
でっけぇ
推定四十五センチを越える
白銀色の
黒くない
黒鯛があがる
蚊柱のごとく
人だかりができる
悔しいから見ないようにする
用意した仕掛けについて後悔するが
用意できていたところで
こちらに掛かったものかどうか考え
納得させる
しかし
やっぱり気になる
色からすれば
居着きではない
流れ者の魚だろう
哀れ
回遊してきてみれば
待ち構えていた罠にはまったというところか
同じ回遊の身としては
ちょいと同情
足下のコマセに
蠅が群がる
ふと気付く
回遊の魚が掛かったのなら
潮は動き始
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