たまり/木屋 亞万
 

履き古した紺と白のコンバース
右手の親指にピンクの絆創膏
アルカイックなスマイルと
アンティークな十字架の髪どめ
少し乱れている長い髪が
歩調に合わせて揺れる

水たまりが日だまりに
君が文字と別れを告げた日
君といつか歩いた道を映す
髪がまだ肩にかかっている頃だ
今は茶髪のショートボブ
これまた歩く度に髪が踊る

煙草と酒は止めたほうが良い
君はすべてを捨てながら言った
焼酎の瓶を叩き割った時に
君の親指は破片に傷ついて
しばらくペンを持てなくなった
悪夢から僕を守ろうとしていた
涙を流しながら君は怒っていた
アルコールのきつい臭いが
部屋に立ち込めてスーパーの袋
割れた卵の黄身が透けていた

君は左手に筆を持ち変え
無韻の詩を書いている
僕らの間の水たまりを
二人で見つめながら
僕は詩を囁きかける
水たまりに波紋ができて
沈澱を浮遊する瓶の硝子が
日だまりに揺れている

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