5才の時のように/kakashi
私は思ったものだ。
敗者だけの世界も案外悪くないなと。
210 私は東京の有名な医学部を卒業してここの病院に派遣された。始めは嫌だったが、この病院にいるうちにここから離れられなくなってしまった。
220 私のいた大学は自慢じゃないが当時日本の大学の中で一番偏差値が高かった。
学生時代の私はそれが誇りだった。
私は勝者であり、そして私の周りに人間もまた皆勝者であることに。
230 そのころの私は敗者を振り返らなかった。敗者を見たら目がつぶれると思っていた。
240 そんな私に皮肉にもこの精神病院への派遣が決まった。
250 私は思った。勝者だけの世界から敗者の集まる世界に移るんだなと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)