「虹の色が足りない」/ベンジャミン
雨上がり
屈折した気持ちで見上げた空に
描かれた虹
一つ悲しみを乗り越えるとき
失くしてしまうものがあるとしたら
それはある種の光なのかもしれません
水分を透過して
感情の成分を色わけするように
現れる虹
泣いて泣いているうちに
笑って笑ってみせるうちに
いつの間にか
どの色か足りなくなっている
一つ悲しみを乗り越えるとき
流した涙が吸い込んだまま
開放されない色が
見えなくなって
しまうのでしょうか
平気と
言いながら
見つめる虹
あちらとこちらが結ばれて
先に進むしかないから
足りないことに気づいていても
先に進むしかないから
その色が
どんな色かわからないまま
また別の虹を描いてしまう
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