飲食店の席で/ブライアン
六月の初め、いつもよりもやるせない思いが募る。五月の大型連休中に帰省できなかったからかもしれない。地に根を張って生きることは難しい。上京して四年が過ぎた。未だ故郷に根の端を置いてきたように思える。そもそも、東京で根を張ることはできるのだろうか。コンクリートで固められた大地。いつも、ふらふらと移動を余儀なくされる。安定感はない。揺れ動き、せめて一時でも、と留まるところを探している。
右隣に座った五人組の男性は皆、紺色のスーツを着ていた。年長者と思われる人物を中心に、センテンスごとに大笑いを繰り返した。誰かが話しだすと、誰かは気の抜けた顔で、窓越しの通りを見る。この界隈で働いている人たちなの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)