ジャングルジム/龍二
錆を組み合わせて作られたジャングルジムのてっぺんにいる少年を見上げた。
木陰が伸び、川沿いを走る高速道路と連なる煙突の向こう側では黄色と橙を混ぜ合わせた太陽がその顔を覗かせ、今日の終わりを知らせる鐘が鳴り響く。
「強くなりたい、この町で一番」と、左腕から血を、目には涙を滲ませ、彼は言った。
少し大げさに笑って、「もう終わりだ」と、彼の手を握った。
「もう終わりだ」。強さとは一人歩きしたただの言葉の一つだ。それが日々に溶け出して、人々を、少年を欺いたに過ぎない、と少年に説明できる自信は無い。
この夕焼けもいつかは終わり、街灯と高速道路を走る車のランプだけを頼りに帰る事になる。さようならの鐘もいつかは鳴り止む。少年の弱さと、強さを夢見る心もいつかは潰えるだろう。
その時は、少年が少年を抱きしめる番だ。
深く残った左腕の傷あとを摩りながら、道の向こう側に迫った夜に「ただいま」を告げる。
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