今は太陽/船田 仰
くちびるから突然漏れる息があって
今ぼくがそれを名づけるから
太陽
坂道を自転車で繰り上げてゆく
いつまでもうしろをからっぽにするために
風が残ってしまいそうな零時に
目が乾いて仕方ないんだ
抱ける色がなくって
きっとポーズをとる瞬きの滑稽さについて
講義している
くちびるの動きを読んでいたせい
この脆い目が
ぱたぱたと道を折ってゆく
なんだか雨が降りそうだ
骨があつい
街の真上に立ったひとびとは
ほんとうは真下で繋がっているだけ
誰だって自転車で坂道を繰り上げる
骨が燃えるまで太陽を沈ませて
それっきり
日本語の看板がからっぽを保ち続ける
透明は抱かせてあげない
誰のものでもない声で呼ぶなら
かごのなかには何もいれずに
泣いてほしいんだ
さよならばっかりがあつい
ねえ雨が降りそうだ
今は太陽
かわくよ
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