父の日/N.K.
父の日は毎年やって来る。
梅雨のこの時期には気分も じめじめとしてしまって
シャツでも送ろうと思っても
淹れたコーヒーをかき混ぜながら
サイズが分からないとひとりごちて
照れくささで熱くなった胸も冷まして
この頃は何も送らずに済ませてしまう。
梅雨のこの時期には毎年のことだが
厚く覆いかぶさる雲を誰もかき混ぜようとはしない。
今年も父の日がやってくることは分かっている。
が
自分が父親になってこの日を迎えるとは考えたことがなかった。
ぐるりと一掻き
タンブラーの中は知らず知らずに掻き混ぜられていたのだ。
自分が抱いているこの子も自分の腕の中でばたばたと回って
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