紫陽花の色づき/水島芳野
こぼれおちるなみだはいつも
生ぬるかった。
きずつけたいわけでは、ありません。
ただわからないのです。
その透きとおった紫陽花のいろが
恐ろしい。
色づいていくことがたまらなく怖くて
夜には独りで、ひざをかかえて泣いてみました。
このまま世界中が凍ってくだけちってしまえばいいのにと
願ったことも。
誰も彼も、
きずつけられたくないくせに
こうもたやすくナイフを持ち出すのですから
ふしぎですね。
あなたが泣きたいときには、どうぞわたしをよんでください。
でもきっと、
わたしはあなたを、呼びません。
そういう、未完成な優しさばかりかかえて
明日もまた「誠実な人」なんて名づけられるわたしが、
もしも枯れてしまったら、どうか根こそぎころしてください。
願わくは
上手にお礼が
いえますように。
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