「精霊、山の手」/菊尾
 
「くっそ。最悪だ。道迷った。絶望的に迷ったぞ。 
 なんだどっから来た?方角全然わかんねーよ。 
 だいたいあいつ、どこまでトイレに行ったんだよ」 
「おい」 
「え?」 
不意に背後から声を掛けられた。 
振り返ってみる。 
おっさんだ。 
どっからどう見てもおっさんだ。 
ただ風貌が普通ではない。 
黒い毛皮?全身が黒い毛で覆われているようだった。 
その上にミノをまとっている。 
落ち葉や木の実でコーティングされたミノ。 
でも顔はおっさんで頭もハゲている。 
七三に分けて隠したいらしいが隠せていない焼け野原。 
見るからに怪しい。 
「道に迷
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