影法師/龍二
開け放った窓から風が吹き込む。朱に染まるフローリングを、冷たく青白い素足で踏み鳴らす。
部屋の隅から眺める鉄塔や、入道雲の様な鳥の群れ。影と影を縫うように走る半そでとランドセルが、甲高い声で鳴いている。
赤に触れると夏の肌を感じる。透明な羽の油虫が水分を忙しなく求めて飛び交っている。
伸びる影法師、10頭身。「俺はそんなに大きい人間じゃないよ」と、語りかけても、彼はその背を伸ばしていくだけだ。
心少に大きくなって、夜を恐れて消えてしまう。彼もまたそんなに大きな人間じゃない。
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