平行に吹く風/つばくらめ
 
革に捕まった
幾度となく反芻した言葉
目が合わないように視線を送る

その人は
窓の外を向いて立っていた
髪も肩まで届かなくなっていた
知らない名前の鞄を持って
緑のアイシャドウを光らせて
作り物のような右手で
知らない誰かにメールを打っている


僕はただ
いつもの青いタオルで
額の汗を拭っていただけ


目的地の二つ前の駅で降りた
電車を降りても
不愉快な風は止んでいなかった

この世界に
平行に吹く風なんて存在しない
交差した二本の直線は
どこまでも遠く離れていくだけ





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