「五月」/Utakata
待ち受けては一つ一つ丁寧に細かく刻んでゆく
別れの言葉なんて
あざけりとか
ののしりとか
そんな風にして言うものだと思っていた
いつだって
どこか怒ったようにして吐き出すべきものなのだと
夜
街路樹が風の中で小さく笑う
さっき踏切が閉じて開いたので
次の電車が来るまでに あと二時間はかかる
レールに足を乗せては慎重に一歩ずつ踏み抜いてゆく
「このまま本当に遠ざかれればいいのに」
意味を持たないまま風に乗って消える
運動場の乾いた地面に
くしゃくしゃになった紙飛行機が落ちている
みんな角を曲がって駆けてしまったので
それが担う言葉がなんだったのか誰一人知ることもない
五月
さよならの色は
柔らかな薄緑色をしていた
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