夕立/umineko
夕立が来る
7階の窓から
君と
西の空を待つ
真っ黒な雲が空を覆う
風が
ビョウ、と低く鳴く
その風をまともに受けて
コウちゃんの顔は
明らかに変である
うひゃあ、とか
オオオ、とか
奇声を上げながら
サッシに顔をはめ込んで
コウちゃんは
夕立を待っている
- ほら
もう向こうの山は
真っ白で見えなくなった
- あっちにいた雲は
たぶん
今は球場の上
ゴロゴロと雷鳴
空の放電
来た
来たよ!
雨が来た!
と
見る間に
地響きのように
凄まじい怒りのように
雨が
世界をねじ伏せる
逃げまどう悲鳴
木々の歓び
ヘッドライトを
点けたって無駄
ねえ
ボクらは
自然には抗えないよ
君の明日と
ボクの昨日が
少しづつ
離れていくように
見ると
コウちゃんは眠っている
顔に風を受けると
人間は眠くなるんだ
ちょっとだけ
眠ろうか
忘れるよりはいいだろう
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