孤酒呷々/松本 卓也
この空間は何だろう
時間にしておよそ三十分前後
圧縮された孤独に包囲され
今にも寂しさに泣き出しそう
逃げなければ心が殺される
自覚した頃には全ては手遅れ
社会人になって背負った
数々の重みに囚われるだけ
孤独と日常を惰性に塗りかえつつ
ただ矮小な自己に縋りつくのみで
彼奴等と共に在るくらいならば
一人部屋で呷った方が幾許もマシ
けれど無音に抱かれながら
口つける酒の不味いこと
早々と眠りについた布団の中で
何から逃れたいのかと自らに問うだけで
もし死後の実在さえ証明されれば
この世に何の未練も無いのにと
繰り返すのは恐怖からか
はたまた行き過ぎた自愛に過ぎないと
知っているからであろうか
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