For beautiful human life from 一般道/キリギリ
 
この右手を掴んでくれないかな、
ほらだんだん距離が開くぞ、わざとらしく遅い歩行にも限度があるぞ、
と妄想している頭部に強い衝撃があり僕は意識を失わなかった。さっき
ハグしてあげたばかりの若者の内の数人が屈んだ僕を取り囲み蹴る。
彼女にだけ接吻したのがそんなに気に食わなかったのだろうか。愛と
憎しみは紙一重だ。脇腹を蹴り上げる足の根元に接吻の最中に擦っていた
少女の太ももがある。なるほど平等でないことは特別な者にさえ怒りを
与えるのか。罪の意識かもしれない。少女の目が微かに潤んでいる。
一緒に怒らなければ仲間はずれにされてしまうから。彼女の蹴りには
哀しみがある。他の者の蹴りにも違
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