硝子の破片 /服部 剛
 
朝食を終えたファーストフードを出たら 
偶然、夜勤明けで店内から出てきた私服の君が 
駐輪場からスクーターに乗り 
アイスコーヒーのストローを咥えて 
立ち尽くす僕の前を走り去っていった 
薔薇に似た薫りだけを残して 
朝のひかりを浴びながら
交差点へ歩いたら 
信号待ちで 
職場のデイサービスに来ている 
お爺さんが 
杖を片手に立っていた 
「 散歩ですか?気をつけて、また待ってますね 」 
お互いに片手をあげて 
一足先に 
青信号の交差点を僕は渡る 
今日も街の何処かで鳴いている、
誰かのクラクション。 
日に照らされた路上に瞬く、
尖った硝子(ガラス)の破片。 
足元に映る独りの影は、
すでに歩き出している。 
飲み干したアイスコーヒーの 
氷の煌(きらめ)きを、噛み砕きながら 
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