ゴミ箱/小原あき
の残りを投げたけど
やはり彼が欲しているのは
人の感情らしかった
仕方がないので寂しさを投げた
わたしの心は
どんどんシンプルになっていく
ゴミ箱を作ってから数日
すっかりシンプルになったわたしは
夫が帰ってきても
愛犬の写真を見ても
空を眺めても
美味しいものを食べても
明日が来なくても
だからなんなのかわからなくなっていた
心臓が動いていればそれで良かった
すべてがそれだけの為に
動いているだけだった
楽しみは捨てないでいた
いらないもののようには思えなかったから
だけど、今では
楽しみがなんなのかわからなくなって
ただ、ひたすら
ゴミ箱をスケッチしている
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