命と本屋/ゆるこ
 
恐ろしい絵本を読みたくて
深夜の本屋に忍び込んだ
硝子を割ったのにセコムは作動しなくて
別世界にきてしまった気がした
 
グラビアから世界地図まで
滑るように見つめていると
ふとした拍子に私の心が
落ちてしまいそうで怖かった
 
 
めくるめくショーウインドーに
月が何度も顔を覗かせて
その度に灰色の絵本棚の影に
少女のように隠れていた
 
広い本屋の片隅に
何もない暗闇があった
そこは誰も見つけてくれない
静かで小さな場所だった
 
 
わたしの、からだは
ちょうどそこに収まった
 
生温い胎動が脈をうち
だいすきな音がうまれはじめた
 

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