熱海の墓標/あすくれかおす
雨曇りに包まれた
135号線沿いの海を
古い友だちと歩いている
どんどんどんどん歩いてく
楽しくて嬉しくて
侘びしくて泣きそうだ
沖に見えるブイは春雨の墓標で
分からないまま生を降り落ちてきた彼らは
そのまま凪に融け込んでいく
風化された時代も遠のいて
砂浜に終戦記念の波線が残ってる
静かな街を背景に
私は生かされたまま
焦がされたまま
「そろそろ彼を見失ってしまった?」
どこでも声が聞こえてくる
プレハブ小屋の木片を踏めば
泥
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