飛行船/t__y_k_
宇宙の紺を大気が薄めて
僕らに届く青は優しい青だ
あくび顔の5月の空には
雲と一緒に飛行船が浮かぶ
思わず追っかけてみたけれど
踵の靴擦れがちょっと痛くて立ち止まった
地平線をビルが削る街は
彼方に緑の稜線が見える
足もとに、橙に光る石をみつけて
それを一つ拾い上げた
きっと夕焼けが稜線にぶつかって
はじけてとんだ太陽の欠片
ほのかにぬくいその欠片を
バッグに入れて持ち帰った
今夜は三日月の船がゆらゆらゆれている
船頭にたっているのはだれだろう
すくなくとも月のうさぎには見えないな
一日の終わりのちょうどしっぽのあたりのこと
布団の中の小さな宇宙に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)