朝のスケッチ/乱太郎
ひとつの優しさ
今日の朝振り向いて
ひとつの喜び
今日の朝テーブルの上にそっと
あたたかな温もりに抱かれるように
背中から朝は訪れた
おはようと
ちいさな声であいさつすると
朝はにっこりほほ笑んだ
美しく輝く朝の訪れに
ほほ笑みを返すと
あちこちで光がいっせいに詩となって
海が花が野山が
陽気に
しゃべりだす
朝は昨日の夜の顔を知っているのだろうか
そんなやつのことなんかさっさと忘れてしまえ
と
言っているみたいで
朝は突然やってくる
夢の世界から
不安や恐怖を消去するために
いろいろな色の朝が
その日の始まりを染めて去っていく
僕らはそれに一喜一憂して
その日に色を塗っていく
子供のころ
朝と友達になれたら
と思っていた
いつも
いねむり小僧に邪魔されて
朝が差し出すコーヒーの香りは
ほんのり思春期のような甘さ
このひとときを
胸ポケットにしまっておこう
そして
ときおり取り出して
今日を過ごそう
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