五月/
小川 葉
五月が
裏口から入ってきて
玄関から出ていくところだったので
私は少し呼び止めて
今こうして二人でお茶を飲み
別れを惜しんでいます
何もはなさずに
はなすことなどもうなくなったから
私たちはどれだけの
五月を過ごしてきたことでしょう
お父さん
夏は海へ行こうね
その一言を忘れて
また五月は
玄関から去っていくのでした
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