体温/高杉芹香
歩きながらつないだ彼の細い指をもてあそんでいると
自分の動脈の流れさえ分かるくらいだった。
華奢で173cmの彼とは歩きながらキス出来た。
キスする瞬間に唇から静電気が弾けて『痛ッ』って笑ったりした。
あれから
あの初めてふたりきりで会った夜から
何度も抱かれて
何度も朝がきた。
彼の白い肌は綺麗だったし
彼の純粋な想いは私の肌を赤らめた。
彼の好みも分かって来た頃
私の平熱が 26度になって
5年間
彼に体温を奪われすぎたことに
私はやっと気付いた。
夏になると彼はいつも会えなくなる。
私はこの秋も彼をまだ想わなければいけないだろうか。
それでも秋になると彼の指が恋しくなるんだろうか。
最近、彼の柔らかな横顔が
もうあまり思い出せない。
私にはもう彼に移せる体温がないのかもしれない。
また
また夏が来る。
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