雫/
高杉芹香
つ落ちた
私は
言いたかったことばをそこで言わなかった
あの雫が合図だったのかもしれないのに
ねぇ
抱きしめられたときのあなたの匂いが好きだった
雨が降ると雨の匂いがする
夕方からの雨に濡れて
ほんの少し
思い出しただけだよ
つまずいてなんかない
あなたのあのときのシャツの匂いと
雨の匂いと
軒先から落ちる雫と
あなたとの秘めた恋と
この東京での夜
戻る
編
削
Point
(2)