雫/高杉芹香
 
軒先から落ちる雫が
あなたの頬を濡らしてた

あなたは
待っていた私の頭を
くしゃっと撫でて
少し困った顔をした


秋から冬にかけての
その川のせせらぎの音は
とてつもなく柔らかく

雨の音以外には
ふたりの鼓動だけが聴こえていた


ごめんね
ごめん
一緒に生きていけなくてごめん


あなたは私と同じ道を選ばないことを詫びて
手を握ったまま
雨雲連なる空を見上げてた


気付けばあなたは私より随分と背が高くなっていて
顎のラインがすっかり大人になっていた

あなたを見上げたら
雨に濡れた私の前髪から雫がひとつ

ぽつんとひとつ落
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