錆び/龍二
 
煙突の先端の黒煙が、落陽と混ざり合う。ガードレールに腰掛けたまま、上を向いて堪えている。
拘置所の壁と堤防の間の、入り組んだ小路。正月にも人っ子一人いない、住宅街の中にぽつんとある古い神社。ずっと昔からシャッターのしまっているさび付いた工場街。
響く夕焼け放送と自転車を立ち漕ぐ子供たちの群れを眺めながら、「もう帰ろう、もう暗くなる」と考えた。
もうずっと、何年も、「もう帰ろう、もう暗くなる」と思っている。その事に気付いて、ふと目を開けると、真夜中で、鍵を無くした俺は、いつも家に帰れないままだった。
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