図書カード/亜樹
図書室で本を開くと
誰かの髪の毛がはさがっていた
細くて少し茶色がかった…
それは置き忘れられた誰かの遺伝子
合理化なんかが叫ばれて
背表紙の裏に潜んでいた
小さなカードがなくなったことが
残念でならない
私にはもう
この髪の毛の持ち主が
同じ教室で外ばかりみているあの人か
10年ばかし前に俯きながら歩いていた彼女だか
知る術はないのだ
どんどん薄くなってゆくパソコンの画面越しでは
同じ本を読んだ誰かの存在は
かすんだおぼろげなものでしかなく
そうしてまた忘れられていくのだ
細い一本の髪の毛のように
確かにここにいたはずの
自分、という存在までも
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