媚態/鈴木
 
 こんな湿気の多い午前は
 ツタヤの試聴コーナーで過ごす
 ひりつく音楽をちゃんとケースに戻せないんですかって

 曇り空の上で太陽は御産しているんだ、父親は三百億光年先の、要は宇宙の向こう側で青く沈滞する老恒星さ。あるいはアンモナイトに張り付いた雑菌か。それか神田川をまたぐ名の定かでない橋の欄干に佇む烏か。というかわたし神田川なのかって

 午後は寝る

 商店街のガレージ下を霧雨ひっかぶりながら
 外壁に点描された蟻たちが
 すれ違いざまに
 働けと言ってくれたら楽になる、とか? ハッ! 道路を挟んだ高台の神社は鳥居が紅色に塗れてねっとりと露を光らせ、境内にはびこる蔦が蠅
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